7.藤原カムイ『ロトの紋章』(1991-1997)
文:小原康太(Vo、Gu)
| さて今回は、またしても少年漫画であります、藤原カムイ作 『ロトの紋章』 です。 ロトってえぐらいですから、ゲームのドラゴンクエストを漫画化した作品ですね。ドラクエ漫画っていうと、他にダイの大冒険があります。それから、徳永英明の主題歌が印象深いアニメのドラゴンクエストもありました。ドラクエ4コマ劇場ってのもあった。とにかくドラクエの人気はすごかったですからね。僕なんかは、ドラクエの鉛筆にドラクエのハンカチ、ドラクエの箸入れなど、エニックスの思う壺になって、いろんなグッズを持って学校に行ってましたから。 僕はこの、ロトの紋章には悲しい思い出がありましてね。 ぼくが通っていた中学校では、授業中に読まなければ漫画を持って来ても良かったんです。それで、みんなこぞって自分のオススメを持ってくるんですが、当時といえば稲中卓球部、スラムダンクなどが人気でした。あとは手塚なんかもみんなで回し読みしてたかな。そんななか、僕は悩みに悩んだ挙句、この『ロトの紋章』をオレ推薦図書に指定したのですが、まあこれが人気がねえ、人気がねえ。誰も読みやしねえ。そんじゃあ、つって、まんがモラン第一回でやったパトレイバーを持っていったら、まあ読みやしねえ。誰も読まねえ。わかんない、難しい、つまんないの一点張りだよ。三点か。そしたら、俺はもうね、知るかよ、おまえらの知能指数に合わせてられますかってんだよ、寝る、てなことに、まあ、なりますわな。なりますよ。そうでしょ。 漫画、音楽、それら芸術一般っていうのは、 見知らぬ人たちとですら、同じことを感じられる、いわゆる「共感」っていう喜びが絶対に大事だと思うのです。国境を超えるとさえ言われる。しかし俺は、机と机の間すら超えられなかった。隣の席のミヨちゃんとの、この隔たりの深さは一体なんだろうか。 そういうわけで、『ロトの紋章』は以後、封印ですよ。まあ、そうなりますわな。そうでしょ。 時は過ぎて、大学も卒業した2003年冬。オレはバンドをやりつつバイトをやる、ペラペラ人間にダーマの神殿で転職していました。 いつものようにバイトをしていた11月のある日、バイト先のヤカンが、俺に痛恨の一撃を食らわしてきました。熱湯で、足をヤケドさせられちゃいました。店長はホイミも使えない、イチサラリーマンだったので、すぐさま病院へ。その後2週間は、バイトができなかったんですね。 バイトができないと金がない。口座を見ると、残りは3ゴールドしかない。これは本当にまずい、ってことで、僕は悩みに悩んだ挙句、『ロトの紋章』を使うことにしました。 『ロトの紋章』を、使う、っていうよりも、売ることにしました。漫画やCDを売るなんて、それまでは信じられない行為だったのですが、背に腹は変えられない、近所の道具屋へ持っていきましたよありったけのロトの紋章15巻(なんだかんだで全部集めてなかったんだけど)。 「おう、これを引きとってくれい。」すると、秋葉原系の兄ちゃん、「少々お待ち下さい」って奥にひっこんだ。いっとくが、なあ、兄ちゃん、これ、チョー名作なんだよ。そんなブ厚いメガネしてんだからオマエにはわかるだろ、藤原カムイはすげえんだよ、な、兄ちゃん。と、遊び人こうたは語り掛けた。しかし、その方向には誰もいない。 しばらくして兄ちゃん、戻ってきた。「150円になります。」「え」「150円です」「あ、はい、えっ」「またお越し下さい」「10円?」「はい」「1冊10円?」「申し訳ありません」 よく見てよ。俺の足。俺のヒットポイント。ヤケドしてんだよ。コマンドのワクが、黄色くなってんのよ。藤原カムイ、すっげえんだよ。 藤原カムイの絵が好きなんだよ。俺は。もちろんドラクエがもとになってるから、モンスターは鳥山デザインなんだけれど、 それを壊さずに独自のニュアンスもいれてあってね。 それは物語全体の設定にも言えますよ。この物語の時代背景は、勇者ロト、つまりVの主人公がゾーマを倒してから、Tの竜王が現れる、そのあいだということになっていて、アリアハン、ロマリア、ラダトームといった、ゲームでおなじみの町も出てきますし、光の玉や星振る腕輪といったアイテムも、物語の中で重要な役割を担っているんですね。ただの飾りじゃなく。それにオリジナルのアイテムなんかも少し出したりして、そのバランス感覚がすごくいいと思います。呪文も、うまく取りいれてます。ゲームが好きな人がわくわくするポイントがちりばめられている。 これ、結局、最後はね、カオスに突入しちゃうんです。最後がカオスっていう漫画、多いですね。エヴァンゲリオン、デビルマン、ナウシカ。みんな同じ方向に行ってしまうのは、なぜなんでしょうか。 なにかを終わらせるということが、いかに難しいかの証拠かもしれません。始めるのは簡単だけど、終わらせるのは難しい。 でも 現実世界では、逆のこともありますね。買うときより、売るときのほうが安くなるなんてね、150円じゃあ、納得できないよ、兄ちゃん。 現在、カムイ氏は、あの『ウルトラQ』を漫画でリメイクしています。これもすごくいいと思うので、ロトとセットでどうぞ。 |